建築設計やアート作品などのコンペに作品を応募するとき、短い作品解説を求められることがあるかと思います。
短い文章を制作の傍らに練るのは面倒なものです。かといって作品を提出する段になって考え始めると結構難しいことに気づいて焦ったりします。
この記事では作品解説が難しい理由と何を書けばいいかについて、私の考えるところをお知らせします。
建築とアートの作品解説(ステートメント)は難しい
芸術作品における主題の表現を「ステートメント(statement)」といいます。作者による作品解説もステートメントです。メジャーな言い方なのかはわかりませんが、便利な表現なのでこの記事では普通に使っていきます。
ステートメントを求められる場面で多いのが、「建築設計やアート作品などのコンペ」です。
このふたつの分野はステートメントの記述がしづらく、またその理由に共通するものがあります。
- 要素の構成によって意味(テーマ)が生じる。
- 個々の要素それ自体を説明してもテーマの説明になりにくい。
- さまざまな意味が複合していて言語化しづらい。
例えば作品内で要素Aと要素Bが何らかの意図を持って配置されていたとします。
そうすること単に「AとBがある」といったことよりも多くの、または違った質のことが表される場合があり、それが作品のテーマであることが多いです。
建築の場合は〈プラン〉〈機能〉〈素材〉〈敷地の性質〉などが複合して空間やストーリーが表現され、アート作品も〈素材〉〈技法〉〈色形〉〈モチーフ〉などが合わさって主題や新しい要素同士の関係性などが表されます。
もちろんこれはかなり簡略化した話ですが、要素が複合して意味が生じるような作品についてステートメントを述べる場合、要素を並べあげてもテーマの説明には足りません。
そのため、建築やアート作品のテーマは大抵複雑かつ抽象的ですぐには言葉になりくいものであることが多いです。
作品解説(ステートメント)の書き方1:全体の構成を作る
コンペなどのステートメントは指定の字数以内で求められることが多いです。
一言だけの人もいれば字数を目一杯使う人、詩のような文章もあれば論述めいたことを書く人もいます。
何を書けばいいのかは悩ましいところですが、指定が数百字程度の場合には、私は以下のような形を意識しています。
①テーマや狙いを最初に述べる。
②どのようにしてそれは実現されているかを述べる
③①を言い換えたり噛み砕いてもう一度述べて、結びの言葉にする。
もちろんこの形式が正解というわけではありません。
ただコンペの審査員にとって審査する作品の事がよく分からないときに、ステートメントは重要なものになるはずです。
そのときに分かりやすく理解の取っ掛かりになるようなものの方が良いと考えて、この形を目指しています。
作品解説(ステートメント)の書き方2:テーマを言語化する
前の項目ではいきなりテーマを述べるとか書きましたが、もちろんそれが難しいわけです。そこで次のような手順で、テーマを抽出して言語化し、作品でどのようにテーマを実現したかを明確にます。
- 具体的に作品内の要素について触れてみる。
「この絵(設計)の中にはAとBとCと…があります。」
→書く事が本当にわからない場合、当たり前の事でも書くとアイディアの取っ掛かりになります。 - どのように要素を配置したか
「それらは〇〇なふうに描かれて(設計して)います。」
→「青い色でまとめた」「静かな様子で」など作品を印象付けているものが言葉になってきます。 - それによってどのようなことが起こったか
「それによって□□が××なのを表現(実現)しました。」
→この辺りでテーマが言語化されてきます。また、作品がどのようにテーマを実現したかも見えてきます。 - 必要に応じて1〜2、2〜3、1〜3を繰り返して文章を固めつつ、テーマをできるところまで言語化しておく
- 書き出しが「テーマは〇〇です」などになるように、抽出したテーマをステートメントの先頭に持ってくる
- テーマが複数ある場合、1〜5を繰り返す
- 結びの文章をいれたり、文章の体裁を整えたりする
これはアイディアを書き出してまとめる手順なので、場合によって向き不向きはあると思います。
ただ、なかなかいい表現が浮かばない時などは、とにかくそこにあるものを数えてみると意外に解決が早いかも知れません。
おわりに
抽象的な内容を繰り返していると、良くも悪くも詩のようになりがちです。この記事の方法はそれを回避したい場合に有効ではないかと思います。
また数百字の文章であれば、アーティストステートメント(作家の自己紹介文)などにも応用できると思います。
以前はどんな作品を作ったのか書こうとしてほとんど何も書けませんでした。それでも何度か書くうちに書くためのコツと手順のようなものがわかってきました。
その中で人にオススメ出来そうな部分を今回記事にしてみました。