ガヌ谷

建築とアートに係る文章表現や考え方のブログ

建築設計課題における事例研究レポートの書き方やまとめ方

 


大学の建築学科などで建築設計の授業が始まると、参考事例を調べて発表するという課題が出されることがあります。これは事例研究などと呼ばれます。

事例研究はその後の建築設計課題のウォーミングアップのような位置づけであったり、何週間もかけてじっくり取り組んだり、模型を作ったりする場合もあります。

色々なパターンがあると思いますが、どれもその後に取り組む建築設計課題のために設定されているという点では共通しています。

この記事では、レポートに適した事例の選び方、事例研究の基本的なやり方などについてお知らせします。

まずは『コンパクト建築設計資料集成』で参考事例を探す

まずは事例研究の対象となる、参考事例候補をいくつか探します。ところがこれが結構難しいです。主に雑誌やインターネットを使うと思うのですが、情報が多すぎたり逆に適切な情報源を見つけられなかったりします。

そこでまず『コンパクト建築設計資料集成』を見てみることをオススメします。

コンパクト建築設計資料集成

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『コンパクト設計資料集成』の良い所は様々な有名建築が〈住宅〉や〈劇場〉といった具合に建物の機能別にまとまっており、しかも同じカテゴリー内で平面図の縮尺が揃っているところです。

例えば参考にしたい事例があっても、雑誌などは図面が一部分しか無かったり、掲載メディアによって縮尺が違っていたりします。

資料集成は平面図が確実に手に入るし、スケールが揃っているため他の参考事例候補と比較しやすいです。

ただ写真はあまり無いので、コンパクト資料集成で目星をつけてからネットや雑誌で写真を見るなどすると良いと思います。

コンパクト資料集成は既に高い評価を得ている建築が載っているので、色々なメディアで多くの写真や図面が手に入りやすいと思います

 

建築設計課題に役立つ参考事例の選び方

建築設計課題の内容に近い事例を選ぶ

事前に建築設計課題の内容がある程度分かっているのなら、出題と似ているかどうかを基準に事例を選ぶと良いと思います。

事例研究を建築設計課題に応用できれば、課題に対して優位が得られるからです。

好みなどで参考事例を選んでも良いのですが、参考事例を丁寧に選べば事例研究もやりやすいし、建築設計課題にも役立つ可能性があります。

特に以下のような条件が設計課題と共通していることが重要です。

  • 敷地に接する道路の数や方向
  • 敷地の形状と大きさ
  • 延床面積や建築面積や階数などの建物の規模

これらは変えることが出来ない前提条件です。「建築設計課題ではこんな設計がしたい」と思っていても物理的に不可能という場合もあるので、事例研究と物理的な条件を揃えておくとその後の設計課題での与件整理に役立ちます。

さらに余裕があれば以下のような点を意識すると良いかも知れません。

  • 機能(プログラム)の性質
  • 構造の種類や形状
  • 住宅地か市街地かなどの、周辺の性質

この辺りがやりたい設計と似ていれば、先行事例として参考になると思います。

建築設計課題の内容が分からない場合

もし課題の内容について大まかな事しか分からない場合は、自分がやりたいことに近い事例を選ぶといいと思います。そして課題が発表されたら課題の敷地に事例研究の図面を当てはめてみて、どんなやり方ならそれが実現可能かを検討すると効率が良いです。

 

建築設計課題の事例研究のやり方

学校によって色々なやり方があると思いますが、レポート形式の場合は以下のような事をすると大体どんな場合でも有効だと思います。

①事例の基本データを割り出す

・各室の面積を測る
・各室のプログラムと動線をダイアグラムに描き出す
・断面のスケッチをいくつかの方向で描く
・断面スケッチにも動線やプログラムを当てはめて断面ダイアグラムを描く


こういったことをやると、大体「どんな特徴を持った建築で、こんな空間がある」という事が掴めてきます

レポートには作ったダイアグラムなどとともに発見した事を述べていきます。またそれを裏付ける資料(写真や図面など)があればそれとともにレイアウトします。歴史、構造、環境への配慮などその他気になる点があれば調べて補足していきます。

②テーマを決めてレポートする

①だけだと、単なる情報の羅列になってしまう場合があります。また建築を構成する情報は多岐に渡るため、テーマを絞ることで事例研究の密度が上がります。

ここからは雑誌やインターネットに載っていない事を推論していき、独自のレポートを作ります。その建物について感じた事、気になったことがテーマになりやすいです。

なるべく細かい点についてレポートすると密度が上がります。

例えば「〇〇邸の高低差のある居室の形状によってもたらされる『居心地のよさ』を支えている、視線のデザインと動線計画」というくらい踏み込んでテーマを設定すると、レポートの密度も上がり、調べることも具体的になってやりやすいです。

具体的なテーマを持ったレポートが設計課題でも活かせれば理想的ですし、そうでなくても①で調べた基本データがあればスケール感や各室の関係などが理解でき、建築設計課題においてアドバンテージが得られます。

 

おわりに

私は事例研究が何をやれば良いのかよく分からなくて苦手でした。でも上手くやれたら良かっただろうなと思います。

事例研究は大抵設計課題ほどシビアに判定されませんが、だからと言ってぞんざいに扱うのはもったいないと思い、この記事を書きました。