アーティストステートメントとは作家の自己紹介文で、ポートフォリオなどに掲載します。書き方や考え方に正解はないのですが、この記事では伝わりやすさを重視したアーティストステートメントの書き方や考え方について解説しています。
詩のような書き方もありますが、どんな表現でまとめるにせよ一旦骨子を作ってから表現や書き方を調整するという考え方の方が上手くいくと思います。
- アーティストステートメントとはポートフォリオなどに載せる作家の自己紹介文
- アーティストステートメントで書く基本的な内容
- アーティストステートメントの書き方と考え方
- アーティストステートメントの書き方の関連記事
アーティストステートメントとはポートフォリオなどに載せる作家の自己紹介文
アーティストステートメントは作家の自己紹介文です。ポートフォリオに載せることが多く、コンペなどに参加する際に提出する場合もあります。
ポートフォリオは「これまでの実績を示して次の仕事につなげるツール」と捉えることができます。作家に依頼する側は、作品の写真だけでなく、経歴・実績や作者のパーソナリティなども含め総合的に判断することが多いと思います。
このことから、アーティストステートメントをポートフォリオに載せる1つの意味は、「どんな作家なのかを示して、仕事につなげやすくする」ことだと言えます。
そのため、アーティストステートメントは「売り込まれる側が知りたいこと」に焦点をあてて、わかりやすく表現する書き方が重要となります。
アーティストステートメントで書く基本的な内容
アーティストステートメントは「どんな作家なのか」を売り込む相手に伝える目的があります。相手や状況によって書くべき内容は変化すると思いますが、次のような内容は大抵の読み手にとって知りたい基本的な情報だと言えます。
- 自分自身の背景や、制作の動機
- 作品や制作活動に共通するテーマ
- 今後の展開や、やりたいこと
読んでもらうときの順番は読む側が全体の内容を理解しやすいように組み立てます。特にこだわりが無ければ上のリストの順に組み立てるのがおすすめです。
この3つの内容が関連しあっていて整合性が取れていると、より全体が読みやすく印象に残りやすくなるといえます。
字数は、掲載するフォーマットなどにもよりますが、各項目で3行~4行くらいまでだと、読みやすいかもしれません。
また、ポートフォリオ全体の整合性という意味で、掲載する作品と関連が薄い内容はあまり書かないようにします。こうすることで、作家のパーソナリティと作品の関連が深まり、中身の濃いアーティストステートメントになると思います。
アーティストステートメントの書き方と考え方
実際にアーティストステートメントを書く際は、書きやすいところから書くといいと思いますが、特にない場合は「活動全体のテーマ」→「制作の動機」→「今後の展開」の順で書く方法がおすすめです。
この方法ではポートフォリオに載せている作品に合わせてアーティストステートメントを書いていくので、作品のテイストとの整合性が高めやすくなります。
「作品や制作活動に共通するテーマ」の書き方と考え方
テーマについて「とにかく書くことが思いつかない」といった場合、私は以下のような書き方をしています。
- ポートフォリオに掲載する作品から、よく使っている要素を見つける
それぞれの作品によく使われる手法やモチーフなどを挙げ、特徴的な要素を探します。例えば「陶器」「動物の形」「白色」「縮こまっている」「手乗りサイズ」という感じです。 - よく使っている手法やモチーフが作品に与えている印象や意味を言葉にする
例えば以下のような感じで連想していきます。作品のもつ要素から連想できる印象や意味を整理すると、制作や作品に共通するテーマが言語化されてきます。
- 陶器→静かさ、素朴さ
- 動物の形→柔らかさ、命
- 白色→無垢、空白
- 縮こまっている→抑圧、不自由
- 手乗りサイズ→かわいい、ペットのイメージ
- 重要な要素をもとにテーマをまとめる
例えば「ペットはかわいくて素朴に思えるが、人の管理なしには生きられない」という感じで、要素が作品に与えている意味をまとめると、作品群に共通するテーマが抽出できます。 - テーマを軸に、作品の持つ要素などを補足して文章にする
例えば「ペットと人間を管理される側とする側として捉え、その関係が持つさまざまな側面を検討しています。Aという手法やBというモチーフは、〇〇や△△の表現として用いています」という感じです。
「自分自身の背景や制作の動機」の書き方と考え方
過去の出来事や出身地の特性、制作のきっかけや動機などが「作品や制作に共通するテーマ」に与えている影響について書きます。
書き方として重要なポイントは「なぜそのテーマに取り組んでいるか」という、制作の動機と作品テーマの関連性が強いことです。この関連を強めることで、内容が深まり記憶されやすくなります。
例えば「〇〇という経験から、人間とペットという関係性について考えるようになり、テーマとして取り組みだしました」という感じです。
また、作品や制作のテーマにそこまで関係しない事柄はあとの方に少し書くくらいにするか、一切書かない方が内容のまとまりが良くなります。
「今後の展開や、やりたいこと」の書き方と考え方
これまでの流れを踏まえて、次の制作や取り組みについて、展望を書くこともおすすめです。アピールにもなるしアーティストステートメントの内容が充実します。
書き方のポイントとして、やりたいことといっても唐突なことではなく今までの流れ(制作の動機、制作テーマ)を踏まえて書くことで、どのような作家なのかが伝わりやすくなります。
例えば「A、Bといった作品を連作として再構成し、〇〇というテーマのシリーズとして制作する」という感じです。
作品制作について以外にも、展覧会などへの参加予定や、制作上重要な活動などについて書くのもいいと思います。
アーティストステートメントの書き方の関連記事
作品自体についてのステートメント(作品解説文)の書き方をまとめた記事です。作品コンセプトやテーマが思いつかないときの考え方なども解説しています。