ガヌ谷

建築とアートに係る文章表現や考え方のブログ

建築空間のふわっとしたイメージを言葉や文章でプレゼンする方法

 

この記事では、建築空間を言葉で表現したり説明する方法についてお知らせします。

みんなの前でのプレゼンやプレゼンボードなどに書く説明文、あるいはエスキスやクライアントとの打ち合わせなど、建築設計は意外と言葉を使う事が多いです。

プレゼンの時にどのような言葉を使って説明するかはものすごく重要です。図面や模型で表現されていることを自分自身で理解し魅力をアピールする力があるかは言葉の説得力で判断される事も多いです。

建築や空間には形、大きさ、素材、機能、印象など多くの属性があり、どれも言葉だけで説明するのは難しいものばかりです。それでも押さえどころを外さなければ全く変わってくると思いこの記事を書きました。

 

 

大学などで要求されている建築を表現する言葉づかい

「心地よい」とか「圧迫感がある」といった主観的/感覚的な表現は大学などアカデミックな場ではとても嫌われやすいです。

単に「ここは圧迫感がある」と言ったとして、その「圧迫感」がどれくらいの程度でどのように発生しているのかその基準について語っていないからです。

さらにそれが良いものか悪いものかについては発表者の主観によっているので、結果的には「明確な根拠はないが感覚的にそう思った」と語っているのに等しくなってしまいます。

演出上そういうのがアリの場合もあるのですが、大学の設計課題は情報を共有して議論するのが前提になっているので、個人の感覚にしか根拠が無いのでは話し合いのベースが無いと見なされてしまうのです。

またこれは大学で建築を学ぶ時に要求されている、基本的な思考の流れと関係しています。

建築設計課題の基本的な流れ

①「かっこいいデザイン」のイメージ(ふわっとした着想)

②「かっこいい理由」を客観的に考察(先行事例の研究やエスキス)

③「かっこいい」を作っている構成要素を抽出・分解・再構築(建築の設計)

①から③をまとめると、「イメージ」を「建築という形」に落とし込んでいくプロセスと言えます。このプロセスが出来て初めて「設計が出来ている」と見なしているのです。

完成作品としての建築は①から③までを経た結果として「かっこいい」のであって、イメージをそのまま自分の設計に持ち込むとあからさまなコピーになってしまうし、自分では何も発見や工夫していないと思われてしまうのです。

 

建築設計のふわっとしたイメージが伝わる言葉づかい

設計課題の初期のエスキスでは、「ふわっとした着想」をもとに先生と話したり課題に取り組んだりします。その時には次のような表現や言葉を使うと良いかも知れません。緑字がイメージの根拠や理由、黒字が伝えたいイメージです。

  • 窓などの開口が多いので明るい
  • 一般的な規格よりも狭い/広い
  • ドアなどがないために空間に連続性がある
  • 周辺の狭小住宅をいくつか複合したような大きさ

数値を示していない「明るい」「狭い/広い」「連続性がある」「大きさ」といった言葉もある意味感覚的な言葉に思えます。しかし何か具体的に比較となるものや理由があって、それに比べて明るいとか狭いとか言っているというのが重要なのです。

このように具体的に広さなどを数字で示さなくても発表者が基準としている尺度を示せればそれに合わせて、議論やアイディアを深めることが出来るようになります。

 

プレゼンやエスキスでよく使う空間を表現する言葉の例

 建築は文章表現で分析や理解が可能な側面があります。例えば「〈生活の気配を共有する〉〈ランドマークになる〉〈一体感がある〉集合住宅」というふうに、ある程度の要素と属性の組み合わせで表現が可能です。

以下はプレゼンやエスキスでよく説明する空間の表現例です。こういった言葉を段階的に具体化していくと、作品説明の強度が上がっていきます。

プログラム(機能)

  • 居室が密集しているので生活の気配を共有する
  • 様々な大きさの空間ユニットがあるので多様な空間やプログラムが発生する
  • 隔離された場所なので静かで個人的な場所である。

敷地

  • 周辺よりも小さいか同じくらいの大きさなので街の中に溶け込む
  • 周辺よりも巨大なのでランドマークになる/都市の印象を変える
  • 街の産業や歴史、スケール感などを受けて(コンテクストに対して)〇〇という設計にした。

印象

  • 同じ素材が使われていて均質的である
  • 全体を吹き抜けや廊下が繋いでいるので一体感がある
  • 開口の大きさなどが揃っているので統一感がある

同じ「広い」という言葉でも前提条件が違えば、示すものも変わります。それを正確に伝えるためにも、根拠や理由を述べる必要があります。またそこに気をつけていれば建築について話すのも聞くのも上手くなると思います。 

おわりに

空間について考えたり述べる時に先生から「〇〇という言葉は使うな」というオーダーが入る事があり、その時には言葉の取っ掛かりがなくて苦しんだ記憶があります。

今にして思うと大学では空間を作ることと同様に議論して共有することが重要であり、みんなと共有できる言葉で話す事を求められていたのだと思います。

あるいは講演会などでもその場で使っている言葉には背景になる言葉があるのだと分かっていれば、もっと深い理解も出来ただろうと思います。そのあたりの事で思う事を記事にしてみました。